Wi-Fi6対応ルータの購入をきっかけに改めて意識することになったDFS、回避方法について色々と調べたのでメモを残しておく。
DFSとは
DFSとはDynamic Frequency Selectionの略称で、ざっくりいうとWi-Fiで使っている周波数と同じ電波を検知したらWi-Fiは停波しなければならない、という決まりのこと。
同じ周波数を使っているのは気象レーダーとか航空機のレーダーなどWi-Fiより重要な電波なので、優先度が高いこれらの電波に明け渡す必要がある。
この影響を受けるのはWi-Fiの電波帯のうち5GHzで、かつW53とW56。
DFSの動作仕様
初期段階
W53もしくはW56の電波を送出する場合は、事前に1分間使いたいチャネルでレーダー波が検出されないか確認した上で送信を開始する。1分間の間にレーダー波が検出された場合は機器の動作仕様によるが、W52に切り替えて送信を開始する、再度別チャネルで1分間確認してから送信を開始するなど。
使用中
使用中も常にレーダー波を監視し続け、検出された場合は速やかに停波し、別チャネルへ移動しなければならない。(実際には10秒の猶予があるらしい)
レーダーが検出されたチャネルについては30分間利用禁止となる。レーダーが頻繁に検出される環境の場合はどんどん利用可能チャネルが減っていく。
どのくらい起きているのか
地域や室内のアクセスポイントの置き場所など関係する要素が多く一概に言えない。
IIJ飯田橋オフィスでDFSはどれくらいおきているのか?(https://eng-blog.iij.ad.jp/archives/4972)
上記レポートによると1日の間に数回発生しているチャネルもありそう。
自宅ではW56だと多いと1日数回、少なくとも1週間に1回以上は発生している。時間帯も全く法則性は無さそう。
何が問題になるのか
大きくは2点
- 送信開始時に1分間待つ必要がある
- レーダー波を検知し別チャネルへ移動する際にW52以外だと1分間待つ必要がある
特に後者が問題で、自宅でリモート会議参加中などに会話が途切れてしまう。
リアルタイム性が重要なオンラインゲームもペナルティになるなどまずいケースがある。
DFSの回避方法
DFSが無いチャネルを使う
2.4GHzを使う → 混んでる、帯域が少ない(遅い)、電子レンジで切れる
→ 別の問題が多くて使えない
W52を使う → 混んでる場合が多い、帯域が80MHzまでしか取れないので最高性能を引き出せない。逆にデメリットを我慢できるならそこまで悪くない。
Wi-Fi 6E(6GHz帯)を使う → 将来的には5GHzから切り替わっていくだろう。端末の対応が進めば一番いいソリューション。
DFSでチャネル移動しても切れない工夫をする
6GHz帯が普通に使えるようになるまで、しばらくは何らかの方法で凌ぐしかない。
レーダーを検知したら速やかに別チャネルへ誘導できればユーザからみた通信断は起きない。
方式は大きくは2つ。どちらもバックグラウンドでDFSチャネルを常に走査して問題ないチャネルを把握しておく。
1.トライバンド(2.4GHz+5GHz+5GHz)のルータで5GHzの1つをレーダー波監視用に用いる (デュアルバンドAPになってしまう)
2.通信用とは別に専用アンテナを備えて監視する
実際の動作例
各社の実装状況
家庭向けモデルへの実装例は少ない。コストを掛けるメリットが少ないからだろう。Wi-Fi6でDFS回避可能なモデルは数えるほどしかないのが現状。
法人向けのモデルは多数の接続を受ける必要があり、W52だけでは帯域が足りないケースがあり、かつ通信断が与える影響が大きいので実装されている機器が多い。
各社の機能呼び名
- DFS 即時切替 (NEC Aterm)
- DFS障害回避機能 (Buffalo)
- Fast DFS機能 (YAMAHA)
- Zero Wait DFS (tp-link / Cisco / Allied Telesis 他海外メーカはこの呼称が多そう)
- DFS障害回避アダプター (Elecom)
DFS回避機能あり機器 (Wi-Fi6メインで選定)
メーカー | 型番 | 実装方法 | 価格 | 用途 | コメント |
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NEC | Aterm WX3600HP | 専用アンテナ | 14,000円 | 家庭向け | ONにするとHT160が使えず、MAX HT80になる。 実装方法は非公開だけど問い合わせてくれた人がいる https://bbs.kakaku.com/bbs/K0001357850/SortID=24510586/ Atermではこの機器に唯一の実装されてる? |
TP-Link | Archer AX73 V1 | 専用アンテナ | 10,000円 | 家庭向け | 今出回っているV2で機能が無くなったので、中古を入手する必要がある。 外箱右下に「トリプルコア」と記載あるものはV1。V2はOneMeshとかいてある。(しれっとデュアルコアにスペックダウンした) |
TP-Link | Archer AX6000 | 専用アンテナ | 12,000円 | 家庭向け | すでに生産終了。スペックは申し分無いがでかい。消費電力もでかい。 |
YAMAHA | WLX413 | トライバンド | 273,000円 | 法人向け | お金があればこれを買うが、完全にオーバースペック。 |
YAMAHA | WLX313 | トライバンド | 46,000円 | 法人向け | Wi-Fi5までの対応なのだが、YAMAHAならこれを買う。(WLX413が高すぎる) |
Buffalo | WAPM-AX8R | 専用アンテナ | 98,780円 | 法人向け | YAMAHA WLX413より安いので、割と現実感あるかも。 |
Elecom | WAB-EX-DFS | 専用アンテナ | 11,880円 | 法人向け | 専用アンテナ方式だが、アクセスポイントにアドオンする機器。 全然レーダー波が飛んでこない場所もあるだろうし、必要に応じてアドオンできる実装は好き。 |
法人向けは探せばたくさん出てくるので、自分が買う可能性があるモデルだけ掲載。
個人向けに比べてWi-Fi6対応機器は少なめ。(まだWi-Fi5機器が多いからかな)
どれを買えばいいのか
長々書いたが、一般家庭では Aterm WX3600HP 一択だと思われる。
ただし、ログ機能が存在しないので、本当にDFS即時切替機能が動作しているのか試す術は無い。
私は色々我慢してWX3600HPにした。ルータ機能はオフにしてアクセスポイントとして使っているが、動作は安定している。
価格コムに書いたレビューはこちら。
価格.com – 『DFS即時切替1点のみ価値がある』 NEC Aterm WX3600HP PA-WX3600HP はるまきくんさんのレビュー評価・評判
予算がある程度あって、動作確認もしたい人は法人向けモデルを購入すべきだろう。
すごく困ってる、という訳ではなければ数年待って、一気にWi-Fi 6E or Wi-Fi 7環境に移行したほうが幸せになれそうではある。
コメント
https://bbs.kakaku.com/bbs/K0001357850/
ここに書いたが、DFS即時切替は(たぶん)ちゃんと動いてる。
ログ見てニヤニヤしたい人種にはつらい仕様。